今日の一冊#16「いつも風を感じて」島田紳助著

今日の一冊#16「いつも風を感じて」島田紳助著

キャンプや一人旅のお供にしたい本をセレクトする連載シリーズ「今日の一冊」第16回めの今回は島田紳助さんの「いつも風を感じて」です。

 

「いつも風を感じて」:島田紳助が綴る感情の風景

2004年、島田紳助は自身の長いキャリアを振り返り、心の風景をエッセイ集『いつも風を感じて』にまとめ上げました。この作品は、KTC中央出版からの発行で、彼の感受性豊かな筆致が読者を引き込みます。

島田紳助がエッセイで描くのは、少年時代や芸能界での下積み時代に感じた「風」。これは彼のキャリアや生活のさまざまな局面において感じた微妙な感情や思い出です。例えば、47歳の時に京都の実家を訪れた際、中学生時代の初恋の相手を思い出し、自転車で彼女の家を訪ねるエピソードでは、彼がいかに過去の感情と現在を結びつけるかが描かれています。

特に心に残るのが、下積み時代に師匠のハンバーグ定食を届けていたエピソードです。当時、彼は経済的な理由からその食事を自分で楽しむことができず、師匠が食べ残した一欠片のハンバーグを心待ちにしていました。成功を収め、余裕ができた後に、同じハンバーグ定食を自身の娘と共にその店で食べた時のことは、彼にとって感慨深い瞬間でした。その食事が運ばれてきた瞬間、過去の苦労や達成感、そして家族への愛情が一気に溢れ出し、彼は感情を抑えることができずに涙が止まらなくなりました。この瞬間は、彼の人生における苦労とその後の充実感を象徴しており、読者にも深い感動を与えることでしょう。

島田紳助は、不動産業や飲食業でも成功を収め、約15年間にわたり日曜日の朝のニュース討論番組「サンデープロジェクト」で司会を務めるなど、多方面での才能を発揮しました。このエッセイ集を通じて、彼の鋭い感性と繊細な洞察力が、ただのエンターテイナーではなく、社会や人間性に深く根差した思考を持つ人物であることがうかがえます。

『いつも風を感じて』は、島田紳助の人生の風景を彼自身の言葉で綴った貴重な文献であり、彼の思考の深さと感情の繊細さを理解するための鍵となるでしょう。

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