「今日の一冊」#17「映画は中国を目指す: 中国映像ビジネス最前線」中根研一 著

「今日の一冊」#17「映画は中国を目指す: 中国映像ビジネス最前線」中根研一 著
キャンプや一人旅のお供にしたい本をセレクトする連載シリーズ「今日の一冊」第17回めの今回は北海学園大学法学部准教授、中国語・中国文化専門の中根研一さんの「映画は中国を目指す: 中国映像ビジネス最前線」です。

1990年代の中国映画市場の変革は、「タイタニック」の大ヒットがきっかけで始まりました。この時期から香港を通じて様々な外国映画が中国本土へと導入され、日本映画も徐々に中国市場に進出し始めました。中国の膨大な人口は、映画産業にとって巨大な市場を意味しており、中国で成功を収めることはハリウッドにとっても経済的に非常に魅力的です。

ハリウッドは、中国の観客にアピールするために、中国の文化的要素やロケ地、さらには中国の俳優を積極的に取り入れる戦略を採用しています。このような文化的アダプテーションは、映画が直接的な観光促進の役割を果たすことを意図しており、映画の舞台となった場所はしばしば観光地として訪れるファンも多いです。特に北海道は、中国で大流行した映画のロケ地として知られており、この背景が中国人観光客による訪日旅行の増加に大きく寄与しています。

子供向け番組の影響についても、本書ではウルトラマンの例を挙げて詳述しています。子供たちが映画やテレビ番組の内容を模倣することは自然な行動であり、これが時に安全に関わる問題を引き起こすことがあります。私自身、二人の子を持つ父として、初めは戦隊モノのような激しい内容を子供たちに見せることに慎重でした。しかし、子育てを経験する中で、映画や番組をただの娯楽ではなく、フィクションとして正しく捉え、現実と区別できる能力を育む重要な教育的役割があることを理解しました。

本書は、映画やテレビが文化に与える影響の重要性を浮き彫りにし、特に中国市場の複雑なダイナミズムを詳細に分析することで、グローバルな映画産業の中での中国の位置づけと影響力を明らかにしています。映画業界の専門家だけでなく、文化的な交流に興味がある一般の読者にとっても非常に有益な一冊です。

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